医学メモ「人工内耳」
 人工内耳は、生まれつき耳が聞こえない方(先天聾)の聴覚を回復し、会話や歌を唄うことも可能にする、すばらしい機器です。その仕組みは耳掛け型の体外部と、耳後部の側頭部に植え込む体内部に別れ、体外部で音を電気信号に変え、それを体内部に伝えます。体内部は、耳の奥にある内耳に電極を挿入し、聴神経を刺激して聴力を得る役割をします。
 日本では1980年に初めて、最重度難聴の成人の方に人工内耳の手術が行われました。現在、手術は幼児から成人まで可能となり、社会的には新生児の聴力検診体制を確立することが重要となっています。そこで、生後3か月までに重度難聴かどうかを診断し、そのうえで補聴器を使い始めます。そして、2歳まで補聴器を連用しながら、その間に正確な難聴診断を確定し、3歳時に人工内耳植え込み手術を行います。3歳から5歳までに手術を行うと、健康児と同じように会話ができる可能性が高くなります。この手術終了時が聴力獲得への出発点となりますが、それまでは家庭・教育関係者・医療関係者が根気よく協力体制を組むことが必要です。
 人工内耳使用後も軽度の難聴は残りますが、赤ちゃんから熟年者までの最重度難聴の方々が、人工内耳で明るく楽しく会話ができるよう、これからも機器の進歩・普及に取り組んでいきます。