医学メモ「結核」
 昨年の冬、国内ではインフルエンザの大流行、海外では新型肺炎SARSの発生と、感染症が猛威を振るいました。しかし、日本で最も死亡者数の多い感染症は結核です。今も年間4,000人近い人が新たに結核にかかり、2,000人以上の人が結核によって亡くなっています。
 昭和25年ごろまでは日本人の死因の第1位は結核でした。戦後、抗結核薬の登場により、結核は不治の病でなくなりました。その後、日本の結核患者数は減少しましたが、平成9年ごろから増加に転じ、11年には当時の厚生省が「結核緊急事態宣言」を発令し、現在も解除されていません。なぜ今、結核にかかる人が増えているのでしょうか?
 結核菌はせきやくしゃみで容易に感染しますが、元々は病原性の弱い菌です。結核菌に感染しても、健康であれば免疫の働きで発病を防ぐことができます。しかし、免疫力の低下した人(熟年者、糖尿病やがんなどの病気にかかっている人、偏った食事や不規則な生活習慣の人など)は発病してしまうことがあります。また、働き盛りの若い世代にも結核が増えています。さらに最近は、抗結核薬の効かない「耐性菌」が増えていることも問題です。
 結核の初期症状はせき・たん・微熱・だるさ・寝汗など風邪の症状と似ています。2週間以上続く風邪の症状は要注意ですので、医師の診察を受けてください。結核は自分だけの病気ではありません。家族・友人・職場の同僚など周囲の人に移る病気です。結核と診断されたら主治医の指示に従って、完全に治しましょう。勝手に治療を中断してしまうと、耐性菌が発生してしまいます。また、身近な人が結核にかかった場合にも、必ず検診を受けるようにしましょう。